このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

学習負担の原因となる「記法の多様性」問題と解決法

バベルの塔 - Wikipedia

神は降臨してこの塔を見「人間は言葉が同じなため、このようなことを始めた。人々の言語を乱し、通じない違う言葉を話させるようにしよう」と言った。このため、人間たちは混乱し、塔の建設をやめ、世界各地へ散らばっていった。

「通じない違う言葉を話すようになり、混乱した」という部分に注目。

一方聖書によるとバベルはヘブライ語のbalal(ごちゃまぜ)から来ているとされる。

バベルの塔」問題

一般的な言葉の問題:

  1. 曖昧性
  2. 多義性
  3. 同犠牲
  4. 不適切性

曖昧性は、論理式による記述で排除する。多義性・同犠牲・不適切性はどうにもならない。

不適切性は完全に諦める。同義性は同義語を明示することで解決する。

  • 言葉の定義時に、同義語を列挙する。
  • 言葉の使用時に、同義語も併記する。

例:

  • A, Bを集合(=型=データ型)とするとき、A×Bを{直積 | 積}{ _ | 型 | データ型 | 集合}と呼ぶ。

展開すると、

  1. A×Bを直積と呼ぶ。
  2. A×Bを直積型と呼ぶ。
  3. A×Bを直積データ型と呼ぶ。
  4. A×Bを直積集合と呼ぶ。
  5. A×Bを積と呼ぶ。
  6. A×Bを積型と呼ぶ。
  7. A×Bを積データ型と呼ぶ。
  8. A×Bを積集合と呼ぶ。

同様に、

  • A∩Bを{共通部分 | 積 | 交わり}{ _ | 集合}と呼ぶ。
  1. A∩Bを共通部分と呼ぶ。
  2. A∩Bを共通部分集合と呼ぶ。
  3. A∩Bを積と呼ぶ。
  4. A∩Bを積集合と呼ぶ。
  5. A∩Bを交わりと呼ぶ。
  6. A∩Bを交わり集合と呼ぶ。

すると、次の文は多義性を持つ。

  • XはAとBの積集合である。

多義性を次のように解決する。

  1. XはAとBの積集合(=共通部分)である。
  2. XはAとBの積集合(=直積)である。

別な例として、

  1. xはインスタンス(=要素)である。
  2. xはインスタンス(=状態)である。

しかし、微妙な問題がある。

  • 変数の型=変数の値の型

から、

  • 変数=変数の値

という用法があるのは分かるが、

  • 変数の集合=変数の値の集合

ではない。型=集合 として、

  • 変数の集合=変数の値の型=変数の型

は成立しない。f(x) = f(y) から x = y は導けない。

一方、等式的変形(=等式的リーズニング)が許される例:

  • 制約=制限
  • 制約=条件=制約条件

より

  • 制限=条件=制限条件
ギュメ記法

多義語の意味を区別するために、多義のどれを意味するかをギュメで示す。

  • タプル 普通の意味
  • 《タプル》 レコードを意味するとき

同義語併記でも同じ効果がある。

  • タプル
  • タプル(=レコード)

語義関係と語義推論

語義とは、言葉の集合と意味の集合のあいだの関係である。

  • 語義:言葉の集合→意味の集合 in Rel

文脈とは、言葉の集合と意味の集合のあいだの部分写像である。

  • 文脈:言葉の集合→意味の集合 in Partial

文脈が語義に{適合 | 妥当}しているとは、文脈が語義の部分関係になっていること。

語wが:

  • 単義語である :⇔ 語義(w) が単元集合
  • 多義語である :⇔ 語義(w) が非空・非単元集合

語u, wが:

  • 完全同義語である :⇔ 語義(u) = 語義(w)
  • 部分同義語である :⇔ 語義(u)∩語義(w) ≠ 空集合

文脈Cを固定すると:

  • Cにおいて同義語である :⇔ C(u) = C(w)
  • Cにおいて異義語である :⇔ C(u) ≠ C(w)

また、wが

  • Cにおいて有意語である :⇔ C(w)が定義されている。
  • Cにおいて無意語である :⇔ C(w)が定義されていない。

語の集合をWとして、Wの有限部分集合を語群と呼ぶ。

  • 語群Xが有意である :⇔ ∩w∈X語義(w) が空でない
  • 語群Xが無意である :⇔ ∩w∈X語義(w) が空集合
  • 語群Xが一意である :⇔ ∩w∈X語義(w) が単元集合

語群Xが有意であるとき、X⊆X' となる語群X'で一意なものが存在するとき、語義関係は有限一意化可能と呼ぶ。

言葉に関して次の命題を考える。

  1. u = w :⇔ uとwは完全同義である
  2. u ≠ w :⇔ uとwは完全同義ではない
  3. u ≒ w :⇔ uとwは部分同義である
  4. u = w in C :⇔ uとwはCにおいて同義である
  5. u ≠ w in C :⇔ uとwはCにおいて異義である
  6. X↓ :⇔ Xは有意である
  7. X! :⇔ Xは一意である

アブダクション

ピグマリオンアブダクション


∃f. f:A→B isInj
-------------------[Injアブダクション]
A⊆B


∃f. f:A→B isBij
-------------------[Bijアブダクション]
A = B

アブダクションの種明かし:


∃f. f:A→B isInj
-----------------------
A\stackrel{\sim}{=}im(f), im(f)⊆B
-----------------------
let A := im(f) in A⊆B


∃f. f:A→B isBij
-----------------------
A\stackrel{\sim}{=}im(f), im(f) = B
-----------------------
let A := im(f) in A = B