Globular探り 4:色々な概念
1次元以上のキャンバスは、[0, 1]n になる。通常のユークリッド空間内の単位矩形だと思ってよい。このキャンバスはn個の軸を持ち、主方向を持つ。
キャンバス次元 | 軸 | 主方向 |
---|---|---|
0 | なし | なし |
1 | x | x方向 |
2 | x,y | y方向 |
3 | x,y,z | z方向 |
4 | x,y,z,w | w方向 |
n | x1,...,xn | xn方向 |
キャンバス内には図(diagram)が描かれる。原則として、キャンバス次元と図の次元は同じとする。ただし、図の“描画次元が大きなセル”を消去(無色化、背景化)することがある。このときは、キャンバス次元と図の次元に差(余次元)ができる。余分な次元が背景、容器と図形の次元差=余次元。
セルという言葉は、本来は基本胞体のことだろうが、胞体的複体=図=ダイアグラムもセルということがある。「セル」は曖昧。n-セル=n-射 という使い方。よって、アトム(アトミック・ダイアグラム)とコンポジット(コンポジット・ダイアグラム)がいいと思う。
コンポジットには、サブジェクト・セル(サブジェクト・アトム)があり、サブジェクトは最高次元(描画次元は最小=0)のセル(アトム)で、コンポジット全体を代表する。
Globularの定理とは、コンポジットに展開可能なアトムのこと。展開操作自体が、(n+1)-コンポジットとなっていて、そのコンポジットがパレット(帳簿、管理台帳)に記録されている。定理の適用が、アトムの展開操作。定理の認識がコンポジットの縮約操作になる。
射影とスライス(断面)
キャンバス(もちろん、内部に図を含む)の射影の基本は1次元下げる操作。まず、描画次元が最高(登録次元が最低=0)のセルを消去(無色化、背景化)する。描画余次元が1(描画次元が(n - 1)=登録次元が1)の超曲面セル(1セル)は、すべてを射影することは出来ないので、射影先面に一番近い超曲面セルだけが像に入る。その他の超曲面セルは隠れる。
描画余次元が2以上(描画次元が(n-2)以下=登録次元が2以上)のセルは、重なりを許せば全て射映像として描ける。重なり部分に交差符号(上か下か)を付与すると、幾何的情報は失われない。まとめると:
- 描画次元=n、登録次元=0 のセルは完全に失われる。
- 描画次元=(n - 1)、登録次元=1 のセルはかなり失われる。
- 描画次元=(n - 2)以下、登録次元=2以上 のセルは保存される。
キャンバスには、その図の複雑度に応じてモースレベル(Morse level)が設定される。これは、図のモース関数の値を正規化したもので、0からkまでの値となる。モースレベルの実際の関数値(実数値)は不要。0はソース面(主方向のソース側境界セル)でkはターゲット面(主方向のターゲット側境界セル)
モースレベルごとにスライス=超平面切断が可能で、スライスを、1次元下がったキャンバス+図として扱うことが出来る。
モースレベルを順次変動させることは、主方向を時間方向だとみなしてのムービー(アニメーション)となる。隣り合うモースレベルはトランジションまたはフリッカーを定義する。
チェーン記法
- f:A→B
- α::f⇒g:A→B
- Γ:::α≡>β::f⇒g:A→B
次元を数値で示して:
- f:1 A 1→B
- α:2 f 2→g :1 A 1→B
- Γ:3 α 3→β:2 f 2→g:1 A 1→B
もっと簡単に、
- Γ:3 α→β:2 f→g:1 A→B
かな。一般に、
- Γ:n α→β:n-1 f→g ... :1 A→B
次元番号をデクリメントして、最後の1次元矢印を削除することを切り落とし(truncation)と呼ぶ。切り落としは射影に相当する。
操作
- 展開と縮約(定理の適用と認識)
- 交替変形(交替律の適用、高さの順序を変更)
- 生成、0次元以外はソースとターゲットから作る。
- 格上げ(bump up)恒等射として次元を上げる。
- 主結合、主方向への結合
- ヒゲ結合、次元が違うダイアグラムの結合
グラフとパーティショニング
0-セルと1-セルからなるコンポジットがグラフだが、それをn-キャンバスにストリング図として描くと、n次元キューブを(n-1)次元の超曲面(区分的線形な面でもよい)による分割となる。
「グラフ←→パーティショニング」の双対性はポアンカレ双対だが、一般的なグラフを考えて、キャンバス次元が低いときは簡単ではない。いや、すごく難しい。
参考
- Title: On the Combinatorics of Carter-Rieger-Saito Movies in the Theory of Smoothly Knotted Surfaces in R4 (November 13, 2004)
- Authors: Glenn Lancaster, Richard Larson, Jacob Towber
- URL: http://tigger.uic.edu/~rgl/shrtknots.pdf
- 33ページ 短縮版