モノイド圏からシーケント計算の作り方
一気にドカッと書こうと思っていたけど、無理そうだからチマチマ書こう、っと。
モノイド圏からハロ多圏を作って、そのハロ多圏上でシーケント計算を作る処方箋が分かってしまったよ、ムフムフ。
もとになるモノイド圏だが、これにはいろいろなオペレータが付いていてもいい。主に考えるオペレータは:
の3つだ。カザネスク/ステファネスク/ハイランド/長谷川の定理によれば、デカルト圏では不動点オペレータとトレースが同値だが、一般的文脈では違うオペレータになる。
他にアクセサリー的なオペレータとして:
- 対角Δ
- 余対角(和)∇
- ブレイディングβ
- クロス(対称ブレイディング)σ
- 放電器!
- ボトム⊥
など。放電器!とボトム⊥は、記号も概念の由来も違うが双対的。対角と余対角ももちろん双対。
オペレータの挙動が基本推論規則となるので、これらのさまざまなオペレータ、その組み合わせによりシーケント計算も変わる。また、オペレータ(恒等や結合もオペレータとみなす)の推論系としての定式化も、公理、構造規則、論理規則のどれにするかはすごくバリエーションがある。好みが相当入っててしまう。まー、それはいいとしよう。
プレーンな(アクセサリ的オペレータを持たない)モノイド圏では、次の定式化が必要。
- Aごとの恒等
- 結合
- モノイド積
- モノイド単位
「普通な感じ」で定式化すれば:
- 恒等は公理(公理シェマ)
- 結合は左cutと右cutの構造規則
- モノイド積は論理規則
- モノイド単位は、定数Iに関する増と減
「定数Iに関する増と減」は構造規則なのか、論理定数の導入消去規則なのかビミョー、まーどうでもいいけど。
推論規則を記述するとき、射(多射)というよりは対象(多対象)を変形することがある。このタイプの規則は略記ができると便利。それで、右側半規則、左側半規則、両側半規則という概念と記法を入れたい。例えば:
これは両側半規則で、次のような規則に書き換えて(展開して)よい。
A, B
-------[両:∧導入]
A∧B
Γ, A, B, Δ ⇒ Φ
-------------------
Γ, A∧B, Δ ⇒ Φ
Δ ⇒ Φ, A, B, Ψ
-------------------
Δ ⇒ Φ, A∧B, Ψ
半規則の意味は多射である。その多射を前結合(多圏の部分結合だが)または後結合することにより、射に関する規則が得られる。左半規則は下から上に読み、前結合により規則を得る。右半規則は上から下に読み、後結合により規則を得る。両側半規則は同型でなくてはならない。
仮定なしでシーケントが証明できれば、そのシーケントが意味する多射がハロ多圏に存在することを保証する。あるいは、そのシーケントが真空から生まれることを保証する。仮定があるなしに関わらず、証明は、多射を1セルとする高次多圏において2セルになる。よって、証明を対象とした計算は2セルの計算になる。恒等証明、証明の部分結合、証明の並置(形式的モノイド積)などは2セル=証明に対するオペレータ。そして、cut消去など、証明の変形は3セルになる。