このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

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タオのトレース可換環の表現論 (6) 仕切り直し

スペクトル半径ρ(a)とユークリッドノルム|a|, |x|に関する不等式 |ax| ≦ ρ(a)|x| を代数的に示すのは無理なような気がしてきた。タオも、別な所ではスペクトル理論をヘビーに使って示している。示す順番が違うと思う。つまり、スペクトル理論を入れてから分かることのような気がする。

まず代数的なセッティング、実係数から複素係数にする。

  • Aは複素ベクトル空間である。
  • Aは可換な乗法と単位元を持つ。
  • Aはスター対合を持ち、スター環である。
  • τは複素線形である。
  • τ(1) = 1
  • τ(xx*) ≧ 0

以上の初期設定で、Aの自己随伴元(自己共役元)の全体が部分ベクトル空間となり、実係数ベクトル空間とみなせることを示す。スペクトル半径 ρ(x) が定義できる元を、スペクトル有界元と呼ぶ。

  • スペクトル有界な元の全体が部分環となることを示す。
  • 自己随伴スペクトル有界な元の全体が部分環となることを示す。
  • 形式計算(形式ベキ級数の計算)を使って、カール・ノイマン級数を構成して、その形式ベキ級数が収束することを示す。
  • スペクトル測度を定義して、スペクトル理論を展開可能にする。
  • スペクトル理論を使って、|ax| ≦ ρ(a)|x| を示す。