タオのトレース可換環の表現論 (6) 仕切り直し
スペクトル半径ρ(a)とユークリッドノルム|a|, |x|に関する不等式 |ax| ≦ ρ(a)|x| を代数的に示すのは無理なような気がしてきた。タオも、別な所ではスペクトル理論をヘビーに使って示している。示す順番が違うと思う。つまり、スペクトル理論を入れてから分かることのような気がする。
まず代数的なセッティング、実係数から複素係数にする。
- Aは複素ベクトル空間である。
- Aは可換な乗法と単位元を持つ。
- Aはスター対合を持ち、スター環である。
- τは複素線形である。
- τ(1) = 1
- τ(xx*) ≧ 0
以上の初期設定で、Aの自己随伴元(自己共役元)の全体が部分ベクトル空間となり、実係数ベクトル空間とみなせることを示す。スペクトル半径 ρ(x) が定義できる元を、スペクトル有界元と呼ぶ。