二分木の多項式の圏と、その部分圏のバーンサイド環
T = T^2 ですべてがつぶれる - 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編
「『二分木領域=T』の多項式で生成される圏」という状況は後で正確に説明する(たぶん)。
Tを二分木の領域として、「Tの多項式で生成される圏」という概念、これは正確にはどういうことだろうか。
まず、対象は、1(単元集合)とTから直和と直積を自由に、ただし有限回適用してできる集合を全部集めたもの。1×X 〜 X とか X×Y 〜 Y×X とかの同一視をしておくと、少し小さくなるが、たいした問題ではない。(〜は同型)
e:1→T(単ノード木をpointする)、c:T2→T(consまたはcompose)、d:1+T2→T([e, c]:1 + T2→T の逆)を固有な(非自明な)斜として指定する。では、自明な射がどのくらいあるかというと:
- 恒等射
- 直積の射影
- 直和の入射
- 直積結合律の構造射 アソシエータ(associators)
- 直積単位律の構造射 ユニッタ(unitors)(なくてもいい)
- 直積可換律の構造射 対称
- 直和結合律の構造射
- 直和単位律の構造射(なくてもいい)
- 直和可換律の構造射
それらから生成するときの組み立て方は:
こうして作った圏はデカルトかつ余デカルトになるが、デカルト性は実は本質ではないし、必要でもない。必要な性質は分配圏であることだ。
構成した分配圏のなかで、無限領域だけを選んで対象類とする。この無限領域の類から誘導された充満部分圏(誘導部分圏)が問題の圏。この圏をBとすると、Bは親の圏の足し算と掛け算を受け継いで(継承演算、誘導構造により)、再び分配圏となる。ここで、同型同値類を取るだけのバーンサイド型関手(骨格関手)を適用して、Bのバーンサイド分配代数を作る。Bのバーンサイド分配代数が計算の舞台となる。
ポイントは、有限領域をすべて捨ててしまうことである。0も1も捨ててしまう。これにより、部分分配圏は一旦は零と単位を失う。が、バーンサイド代数でも零と単位を失うとは限らないのだ。これが盲点というか、ものすごく気付きにくいところだ。0や1はバーンサイド代数の零や単位ではなくて、あくまでも代表元だったので、他の代表元を取り直せる可能性はある。バーンサイド代数でも零、単位が消えたと思ったのは錯覚だったわけだ、目がくらんでいた、痛恨!
さーて、それとは別に、分配代数や環の計算と推論を行う形式的演繹系を準備して、Bのバーンサイド分配代数(結局は環)をモデルとしたモデル論を作る。このモデル論と、τを1の原始6乗根としてZ[τ]で定義される環とのモデル論を比較する。バーンサイド分配代数は実は可換環となり、Z[τ]と計算と演繹に関しては区別できない。どの程度区別できないかが問題なのだが。