双積から加法は出る
行列の圏と行列レトラクタブルな圏 - 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編より:
零対象と双積を持つ圏は、自動的に(必然的に)近加法構造を持つと思うが確認してない。おそらくは、「双積を持つ近加法圏」という定義は冗長だろう。
A×Bを直積、A+Bを直和、A※Bを双積とする。米(※)じゃなくて、×と+を重ねた記号があると意味的にピッタリだと思うが、まー、米でもいいや。
射影をπ1A,B, π2A,B、入射をι1A,B, ι2A,Bと書く。零射は0A,B。
(A, B, A※B; π1A,B, π2A,B, ι1A,B, ι2A,B)が双積系であるとは、
- (A, B, A※B; π1A,B, π2A,B)が直積系
- (A, B, A※B; ι1A,B, ι2A,B)が直和系
になっていて、さらに次の等式が成立:[追記]ウワーッ、結合の順序が逆だ!!! 以下、π;ι を ι;π の直して読んでね。[/追記]
- π1;ι1 = 1A
- π1;ι2 = 0A,B
- π2;ι1 = 0B,A
- π2;ι2 = 1B
これは、δi,jA,B(i,j = 1 or 2)をそれなりに定義して、
- πiA,B;ιjA,B = δi,jA,B
とも書ける。
双積を定義するには、前もって零対象0と零射0A,Bの存在が必須なので、双積を持つ圏(category with biproducts)は必然的に零を持つ圏(category with zero)である。
さて、双積を持つ圏では次が成立する。f:A→P, g:B→Qとして;
- <π1;f, π2;g> = [f;ι1, g;ι2] : A※B→P※Q
これを確認するには、<π1;f, π2;g>;πi と [f;ι1, g;ι2];πi を比較すればいい。実際にπ1でやってみると:
- πA,B1;f = [f, 0B,Q] : A※B→P
という等式が必要になるのだが、それは次の2つの等式から出る。
- ι1;π1;f = ι1;[f, 0B,Q]
- ι2;π1;f = ι2;[f, 0B,Q]
双積の定義 πi;ιj = δi,j からすぐにわかる。
それで、
- f※g = <π1;f, π2;g> = [f;ι1, g;ι2] : A※B→P※Q
と定義して、当該の圏が※に関してモノイド圏になることが示せる。このモノイド積※と、前もって持っている直積構造/直和構造から、双積を持つ圏が(等式的)双デカルト圏であることがわかる。双デカルト圏には、対角Δと余対角∇から近加法的構造(nearly additive structure)が入るから、双積を持つなら自動的・必然的に近加法的であることになる。
やっぱりね。
実はまだ、双積を持つ近加法圏の加法(事前に定義されている)が、双積から誘導された(induced)加法かどうかはわからない。双積と協調する加法がイッパイあるとは思えないが、確認してはいない。