結び目を勉強しなかった不徳
次の本を渋谷の本屋でパラパラめくっていた。
- 作者: 小島定吉
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2002/10/01
- メディア: 単行本
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146ページ以降に、いつも僕が絵算で描いている図がワラワラと出てきてビックリした。冷静になってみれば、ブレイド圏などが3次元トポロジーや位相的場の量子論(TQFT)に関係するのだから、まー、サモアリナンなんだけど。
しかし、タングル基本図式がストレートな単一線、2種のブレイド生成元(互いに逆)、Kelly単位/余単位に対応する半円形なのか(P.147)。これらで自由生成される図形に同値関係を入れるのだが:
- 縦スライドは、僕がストレートジャンクションの伸ばし/縮め、射のずらし(シフト)と呼んでいるものだ。
- 極点対の消滅は、ジグザグ公式、または剛性だ。
- 交点の回転は、クロスオーバー公式とクロスの計算をあわせたものだろう。
ヤンキングとアルチン・ブレイド関係式に相当するライデマイスター移動(ヤンキングがそのI, アルチンがII, III)と、上の縦スライド、対消滅、交点回転をトゥラエフ(Turaev)移動と呼ぶそうだ。トゥラエフ移動で移る図式はイソトピーらしい。
うーむ、、、しかし、僕は激しくあさはかだった。むかーし、図書館で結び目理論の翻訳本(おそらくクロウェ ル&フォックス 寺阪&野口訳)を見つけたことがあった。そのとき僕は、結び目理論は箱庭みたいなもんだと思った。趣味的に面白いかもしれないが、小さな閉じた世界と感じたわけだ。広がりや普遍性がないものが好きでなかった僕は、こんなものは勉強するに値しないと判断した。
これはとんでもないオオマチガイだった。タングル、絡み目、結び目、ブレイドは、今や整数論から数理物理まで、そして圏論にも多大な影響と刺激を与える壮大な理論になってしまった。素数も量子重力場も、その根源はタングルや結び目のようなものだというハナシまである。あのとき、あの本をちゃんと読んでいれば、、、と、そんな後悔ばっかし。