ベクトル空間のインデックス構造とスカラー構造 その3
不動点を持たない対合を対蹠オペレータ〈antipodal operator〉、あるいは単に対蹠と呼ぶ。集合Aが対蹠 ¬:A→A と、極性 p:A→{+, -} を持ち、
- p(¬a) = -(p(a))
が成立するとする。AのクリーネスターA*に、対蹠を拡張する。
- ¬[a1, ..., ,an] := [¬an, ..., ¬a1]
これにより、任意の a∈A* に対して ¬a が定義されて、不動点を持たない対合になる。A* は、もともと自由モノイドで、連接によるモノイド構造を持つ。モノイドと対蹠を合わせて、対蹠的モノイドになる。
- ¬(ab) = (¬b)(¬a)
¬ε = ε は成立する。ここだけ不動点がある。
対蹠的モノイドMに対して、Mを頂点集合とする多グラフ(ケーブルグラフ)Gを作り、その多グラフから自由生成した圏は厳密コンパクト閉圏になる。この厳密コンパクト閉圏から、ベクトル空間へのコンパクトモノイド関手が計算の意味論を提供する。
Fが意味論を提供するコンパクトモノイド関手とすると:
- μA,B: F(A)F(B)→F(AB) 括弧内の併置は連接
- ε: I→F(ε) 括弧内のεは空リスト
双対化子に関しては、
- θ:F(A)*→F(A*)
さらに、ev, coevに関しては、Fで双対系を写した先が双対系になる、という定義だろう。
θ:F(A)*→F(A*) のところで、ゲルファント変換の逆を使うのだろう。これで、ゲルファント変換が登場する必然性がハッキリとわかる。Fの代わりにスコットブラケット〚-〛を使うといいかも知れない。
- μ:〚A〛〚B〛→〚AB〛
- ε:I→〚ε〛
- θ:〚A〛*→〚¬A〛
きれいにまとまったな。
つまり、古式テンソル計算体系は、ベクトル空間のコンパクト閉圏の部分圏に足して厳密化を与えることになる。双対化子が厳密対合になるし、テンソル積も厳密演算になる。非厳密な部分圏と、厳密な古式テンソル計算体系の橋渡しをするために、様々は構造射が登場して、一貫性条件を満たしている、という構図だ。なるほどね。