偶数の“定義”に関して
「2で割り切れるからといって、それだけで偶数とは言えない」の背景を考えてみる。
定義の例:
1番が定義だとすれば、2番は真偽決定可能な命題となる。が、通常は、
となることが心配になってしまい、定義(=断言)することができない。あるいは、定義は常にクレームが付く可能性があると思ってしまう。
- 偶数とは、2で割り切れる整数である。
- 0以上10以下の整数のなかに5個の偶数がある。
これに対して、
- 2で割り切れる整数だからといって、偶数と断言するのはいかがなものか?
とクレームされるのが心配なので、
- 2で割り切れる整数だからといって、偶数とは言えない。
別な可能性として、定義した側の発言を含意として捉える。つまり、
- 偶数とは、2で割り切れる整数である。
- 偶数ならば、2で割り切れる整数である。
これを同じ意味と捉える。含意命題は「逆、必ずしも真ならず」だ。例えば
- 成人しているなら、選挙権を持つ。
- 選挙権を持つならば、成人している。
最近では、二番目は真ではない(反例が見つけられる)。
いま、スピーカー(定義者)が次のように言ったとする。
- ホゲタンプとは、2で割り切れる整数である。
これをリスナーが含意命題として解釈する。
- xはホゲタンプである ⇒ xは2で割り切れる整数である
含意命題であるなら、次は保証されない。
- xは2で割り切れる整数である ⇒ xはホゲタンプである
ホゲタンプの外延は、2で割り切れる整数の外延よりは小さいだけで等しいとは限らない。例えば、ホゲタンプは4の倍数を意図しているかも知れない。「xはホゲタンプである ⇒ xは2で割り切れる整数である」はホゲタンプに対する情報にはなるが、ホゲタンプを完全には規定しない。
定義が、ナニカに対して部分的な情報を提供することだとするなら、スピーカーがリスナーにとって未知なナニカを語る状況が定義になる。
「山形県出身の男」という部分的な特徴付けに頼って、山田さんを決定することはできない。
これが定義なら、確かに定義からナニカを決定はできない。
「定義」の定義
結局問題は「定義」とは何か? という話で、「定義」自体を誤解している、というか「定義」の解釈に合意できてないことがあるわけだ。僕は、「定義があれば、決定・判定ができる」と思っている、あるいは、「定義」という言葉をそう理解しているが、誰もが「定義」をそう理解しているわけではない。
- 定義は、未知のナニカに対して情報を提供する。
- しかし、その情報からナニカを決定・判断はできない(できるとは限らない)
と理解している人もいる。