このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

偶数の“定義”に関して

「2で割り切れるからといって、それだけで偶数とは言えない」の背景を考えてみる。



定義の例:

  1. 優秀な技術者とは、早稲田大学理工学部を卒業した技術者である。
  2. (何人かの人がいる特定の場所で)このなかには、5人の優秀な技術者がいる。

1番が定義だとすれば、2番は真偽決定可能な命題となる。が、通常は、

となることが心配になってしまい、定義(=断言)することができない。あるいは、定義は常にクレームが付く可能性があると思ってしまう。

  1. 偶数とは、2で割り切れる整数である。
  2. 0以上10以下の整数のなかに5個の偶数がある。

これに対して、

  • 2で割り切れる整数だからといって、偶数と断言するのはいかがなものか?

とクレームされるのが心配なので、

  • 2で割り切れる整数だからといって、偶数とは言えない。


別な可能性として、定義した側の発言を含意として捉える。つまり、

  1. 偶数とは、2で割り切れる整数である。
  2. 偶数ならば、2で割り切れる整数である。

これを同じ意味と捉える。含意命題は「逆、必ずしも真ならず」だ。例えば

  1. 成人しているなら、選挙権を持つ。
  2. 選挙権を持つならば、成人している。

最近では、二番目は真ではない(反例が見つけられる)。

いま、スピーカー(定義者)が次のように言ったとする。

  • ホゲタンプとは、2で割り切れる整数である。

これをリスナーが含意命題として解釈する。

  • xはホゲタンプである ⇒ xは2で割り切れる整数である

含意命題であるなら、次は保証されない。

  • xは2で割り切れる整数である ⇒ xはホゲタンプである

ホゲタンプの外延は、2で割り切れる整数の外延よりは小さいだけで等しいとは限らない。例えば、ホゲタンプは4の倍数を意図しているかも知れない。「xはホゲタンプである ⇒ xは2で割り切れる整数である」はホゲタンプに対する情報にはなるが、ホゲタンプを完全には規定しない。



定義が、ナニカに対して部分的な情報を提供することだとするなら、スピーカーがリスナーにとって未知なナニカを語る状況が定義になる。

  1. 「僕の友人の山田さんは山形県出身なんだ」
  2. 山形県出身だからといって山田さんだとは限らない。
  3. 「僕の友人の山田さんは男なんだ」
  4. 男だからといって山田さんだとは限らない。

山形県出身の男」という部分的な特徴付けに頼って、山田さんを決定することはできない。

これが定義なら、確かに定義からナニカを決定はできない。

「定義」の定義

結局問題は「定義」とは何か? という話で、「定義」自体を誤解している、というか「定義」の解釈に合意できてないことがあるわけだ。僕は、「定義があれば、決定・判定ができる」と思っている、あるいは、「定義」という言葉をそう理解しているが、誰もが「定義」をそう理解しているわけではない。

  • 定義は、未知のナニカに対して情報を提供する。
  • しかし、その情報からナニカを決定・判断はできない(できるとは限らない)

と理解している人もいる。