標本部分環
AがR上の可換環で期待値(トレース)E[-] を持ち、統計独立性の概念が定義されているとする。X, Yの(代数的な)統計独立性は、多項式f, gに関して、
- E[f(X)] = 0, E[g(Y)] = 0 ならば E[f(X)g(Y)] = 0
として定義できそう。複数の要素の統計独立性も同様。
f(X) = X - μ, g(Y) = Y - ν として、E[f(X)] = E[X - μ] = E[X] - E[μ] = μ - μ = 0、gも同じとすると、f(X)g(Y) = XY - μY - νY + μν = で、E[f(X)g(Y)] = E[XY] - μE[Y] - νE[Y] + μν = E[XY] - μν - νμ + μν = E[XY] - νμ = 0 から、
- E[XY] = μν = E[X]E[Y]
これが最もよく使う。XとYの統計独立性を X⊥Y と書くと、
- X⊥Y ならば、E[XY] = E[X]E[Y]
X1, ..., Xn が可換環(トレース付き)Aの元として、これらから生成される部分環の概念は普通に定義できる。
部分環の生成元X1, ..., Xnが統計独立で、次を満たすとき、標本基底と呼ぶ。
- 任意の多項式fに対して、E[f(Xi)] = E[f(Xj)]
次のように言っても同じ、
- 任意の非負整数kに対して、E[Xik] = E[Xjk]
標本基底 X1, ..., Xn から生成されたAの部分環を標本部分環と呼ぶ。標本部分環における形式的な多項式計算が、通常の統計量の計算になる。この計算は、具体的な観測量の代数Aとは無関係で、多項式環に公理かされたEを入れたものと同じだと思われる。つまり、環Aの個性はまったく無くなってしまうのではないかと。