このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

dν = fdμ の意味

X = (ΩX, ΣX, μX) を測度空間だとして、ΩXをX、ΣX = ΣX、μX = μ と略記する。X上の(標準的)積分Iμは、XからR≧0への関数に対して定義されるとする。Iμ:Integ(M)→R≧0。Integ(X)は、X上の可積分R>≧0値関数の全体。

f∈Integ(X)を選んで密度関数と呼ぶ。新しい測度νを次のように定義する。

  • ν(A) := Iμ(fχA)

χAは部分集合Aの特性関数で、fχAは、fと特性関数の積なので、fをAでカットオフ(あるいはマスキング)したもの。

以上にように、νがfとμから定義されたとき、便宜的に dν = fdμ と書く。この記号は次の計算で便利に使える。


ν(A)
= IνA)
= ∫χA
= ∫χAfdμ
= ∫Afdμ

Iν(g)
= ∫gdμ
= ∫g(fdμ)
= ∫(gf)dμ

密度関数がディラックδになってしまうときでも、仮想的な密度関数を考えるか、関数概念を拡張するかで、fdμ に意味を持たせることができる。離散確率分布の“確率質量関数”というのは、仮想的な密度関数または密度関数の代理表現のようなものだ。あの不連続な関数自体をどうこうしてもしょうがない、表現形式に過ぎない

密度関数を、-∞から積分した不定積分である累積関数は意味がある。ただし、値の空間がRであるときに限られる。RRに線形順序構造があるから、-∞からxまでの累積値をF(x)と定めることができるわけで、多次元ベクトル(or アフィン)空間の点xを取って、xまでの累積値と言われても累積の方法が決まらない

密度関数fを物体=物質分布と考えると、fdμは、標準的なカラッポの空間の測度μから、物体=物質分布がある空間での物体を考慮した測度νを作る操作になる。しかし、「物体がないカラッポの空間」を定める基準がないと、μとνの関係は相対的となり、密度関数で移れるという「関係」があるだけとなる。測度を対象、密度関数を射とする圏が出来る。