右と左 n-たび セリンガーの左右
セリンガーの"A survey of graphical languages for monoidal categories"を眺めていて気付いた。彼は、右肩に星が付くA*を「右双対」と呼んでる。
復習:まず、白旗さんの "A sequent calculus for compact closed categories" (http://citeseer.ist.psu.edu/shirahata96sequent.html)
Definition 1
In a monoidal category, a left adjoint of an object A is an object A* with maps
- dA:I→A×A* (unit)
- eA:A*×A→I (counit)
such that ...
次にバカキリ本:
(p.29)
DEFINITION 2.1.1Let C be a monoidal category and V be an object in C. A right dual to V is an object V* with two morphisms
- (2.1.3) eV:V*×V→1,
- (2.1.4) iV:1→V×V*,
such that ...
で、セリンガーのテキスト:
(p.18)
Definition ([17]). In a (without loss of generality strict) monoidal category, an exact pairing between two objects A and B is given by a pair of morphisms η: I → B×A and ε: A×B → I, such that the following two adjunction triangles commute: ... (4.1)In such an exact pairing, B is called the right dual of A and A is called the left dual of B.
用語と記号を合わせて、余単位を書いてみると:
- 白旗さん A*はAの左双対 A*×A→I
- バカキリ A*はAの右双対 A*×A→I
- セリンガー A*はAの右双対 A×A*→I
状況は悲劇的; 白旗さんとバカキリの定義は同じだが左右が逆、バカキリとセリンガーは同じ言葉に逆の定義。統一されているどころか、考えられるすべてのバラエティがある。
「右肩星なら右双対」は憶えやすいからいいのだが、A*×A と A×A* のどっちがいいかは趣味の問題か。A*×A が多いような気がするし、線形代数の双対とペアリングとの相性はいい、<x, f> より <f, x> のほうが多いだろう。
ところで、ストリートのように、双対と随伴を区別しないとどうなるか? F -| U のとき、UはFの右随伴と呼ぶべきだろう。UをF*と書くことにすると、余単位は、ε:F・F*→I となる。ここで、・は反図式順の関手結合。つまり、非対称テンソル積を反図式順結合にするなら、セリンガーの用法と整合する。一方、図式順結合を採用すると、ε:*U;U→I となり、また違う記法になってしまう。
どうやってもうまくいかないのだが、現状での僕の態度としては、
- 右双対は右肩の星(憶えやすい)
- 右双対は余単位の定義域の右側に置く
- 右随伴は -| の右に置く
- 左右を整合的にするために、テンソル積としては反図式順結合を採用する
なお、⊥が双対化対象のとき
- *A = ⊥ o-- A = ⊥A
- A* = A --o ⊥ = A⊥
だと思う。このときはやっぱり左右がひっくり返る。全面的に左右を揃えるのは所詮無理なのだ。