(2+ε)次元の幾何、ひねり付きブラケット
結び目、絡み目(リンク)、もつれ(タングル)などの幾何は、もともとは3次元内の全同位による同値類を考えるのだが、しかし、操作的には2次元に張り付いた紐のハナシになっている。交差が2種類ある点で2次元ではないのだが、この交差の上下はZ方向にε(任意に小さい数)だけの高さをとれば済むので、からみ系/もつれ系の幾何は、3次元つうより (2+ε)次元の幾何というべきだろう。
タングルの釘の位置を、(i, 1)(i = 1, 2, 3, ...)と(j, 0)(j = 1, 2, 3, ...)のように固定してもいい。また、タングルの拡がりを、0≦x、0≦y≦1に限定してもよい。そのうえで、n→mのタングル図は、[0, 1]と単位円の直和からの写像としていいだろう。εの高さは交差点での符号(時計回りか反時計回りか)でも区別できる。[0, 1]と円周をR1とR2の部分集合として、なめらかな圏で考えれば、初等的な微積分で具体的表式が得られる。
この表式では向きが必然的に付くが、パラメータ表示の取り替えとして向きも忘れることができる。
とりあえず、次の同値関係を導入しよう。
- 自明同位: 交差を変更しないで位置を直すだけ。
- 正則同位: ヤンキングはしない。
- 全同位: すべてのライデマイスター移動に対応。
タングル写像φ:n×I + m×C→R2があると、これをパラメータの取り替えと、自明同位で割った空間をOTD(oriented tangle diagrams)とする。向きを忘れたものはULD(unoriented tangle diagrams)。OLD, ULD, OND, UNDは、oriented/unoriented link/knot diagrams, *BDはbraid diagrams。*ND⊂*LD⊂*TD、*BD⊂*TD、ブレイド閉包は、*BD→*LD の写像を定義する。
正則同位をRI、全同位をAIとする。UBD/RI はブレイド群BGとなる。カウフマンブラケットは、ULD/RIで定義される。ブレイド閉包は、UBD/RI→ULD/RI とみなせるので、UBD/RI を経由して、ブレイド群上にカウフマンブラケットを定義可能。Cl(UBD/RI)⊆ULD/RI にマルコフ同値の半分(マルコフ変形その1)を入れてもなおカウフマンブラケットは定義できる。
F*LD を枠付き(framed)なリンク図とする。各リンク成分に整数としてひねり数を入れておく。カウフマンブラケットは、FULD/AI上でひねりを乗法作用として定義できる。UBD/RIを、FULD/RIに埋め込み、FULD/AIに落とすことにより、BG = UBD/RI上のひねりを考慮したカウフマンブラケットが得られる。
このひねり付き(枠付き)カウフマンブラケットが面白い。