概可逆なISRと概逆力学系
形式言語理論では、生成系と認識系(あるいは分解系)が出てくる。これを定式化するにあたって、係数べき等半環(ISR)が概可逆という性質を持つことが重要だと思われる。
RがISRだとして、a∈Rに対して、bがaの概逆元とは:
- b・a = 1, a・b ≦ 1
のこと。特定された一部のaに対して、aの概逆元を一意的に対応させる部分写像(-)'があるとき、(R, ')を概可逆なISRと呼ぶことにする。R内で概可逆な元を概単元と呼ぶことにする。Rが概単元で生成されていることを要求する。
Rが概可逆なISRで、R係数の境界付きのリグラフAがあるとする。Aのシェープである有効グラフの向きを逆にして、始境界と終境界を入れ替える。さらに、辺ラベルの値を、その概逆元の置き換えたものをAの概逆なリグラフと呼ぶ。リグラフは力学系と解釈できるので、同様にして概逆な力学系も定義できる。
もちろん、リグラフに概逆が存在するためには、辺ラベルがすべて概単元である必要がある。
Aがリグラフで定義される力学系として、そのS行列(つまりクリーネ・スター)をSとする。Aの概逆をA'、そのS行列をS'とする。φがAの始境界(A'の終境界)で与えられる状態、ξがAの終境界(A'の始境界)で与えらる状態のとき、次の2つは同値だろう。
- A上で、ξ⊆Sφ
- A'上で、φ⊆S'ξ
Aを生成系とみなすと「ξが、φから生成される安定状態より小さい」ことは、対応する分解系A'において「φが、ξを分解した安定状態より小さい」ことで示せる。