V-豊饒テンソル圏
テンソル圏の定義を見てると、少し一般化してみたくなる。
Vを必ずしも対称ではないモノイド圏として、そのモノイド積を○とする。CがVで豊饒化(enrich)されているとする。事例としては、Vが可換(アーベル)モノイドの圏で、○が可換モノイドの具体的テンソル積。V-豊饒(enriched)圏Cに対して、V-豊饒圏 C□C を次のように定義する。
- |C□C| = |C|×|C| (×は集合の直積)
- (C□C)[(X, Y), (U, V)] = C(X, U)○C(Y, V)
□は○から決まるので、記号の濫用で C○C と書いてもよい。V-関手 C○C→C を、C上のV-双関手だと定義する。V-双関手:C○C→C があって、モノイド積を定義する自然同型α、λ、ρを備え、マックレーン一貫性を満たすとき、をV-テンソル積(双関手)と呼ぶ。
V-テンソル積(α、λ、ρを含める)を持つV-圏Cを、V-豊饒テンソル圏、あるいは単にV-テンソル圏と呼ぶ。
本来のk-線形テンソル圏は、Vをk-ベクトル空間の圏にすれば得られる。アーベル群の圏、環Rに対する(R,R)両側加群の圏、アーベル半群の圏、アーベルモノイドの圏などをVとすることもできる。