二重トレース付き半環圏
ステファネスクもセリンガーも、トレースには二種類あることを示唆している。iterational (またはlooping, additive) traceと existential (またはmultiplicative) trace。つまり、繰り返しや再帰に関するトレースと、論理の存在記号に似たトレースだ。2つのモノイド積とそれぞれの積に対する2つのトレースを備えた圏の実例がある。2つのトレースは、繰り返し的トレースと存在的トレースになる。
関係の圏に、集合の直和と直積を考えて、クリーネスターをベースに定義できるトレースと、存在記号で定義できるトレースを考えたものが典型的な二重トレース付き半環圏(doubly-traced semiringal category)となる。他に、ベクトル空間の圏に直和とテンソル積を入れて、直和に関するトレースとテンソル積に関するトレース(対角和、縮約)を考えると、これも二重トレース付き半環圏になる。(ステファネスクの用語では、Mixed Network Algebraと呼ぶ。)
2つのトレースをATrとMTr(AdditiveとMultiplicative)とすると、ATrとMTrの関係が問題になる。現状では、僕はMTr(A+B) = MTr(A) + MTr(B)くらいしかわからない。
二重トレース付き半環圏の実例や計算に関して、古典的なテンソル計算や代数的グラフ理論にヒントがありそうな気がする(山勘)。境界付き有向グラフの圏も事例になりそうな気がする。グラフの積が意外に考えにくいのだが、反射的グラフの圏で考えたほうがいいかもしれない。
ひょっとして、フル線形論理のモデルのなかに二重トレース付き半環圏が登場するかも知れない(さらに山勘)。