このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

社会科学系の記述と証明

以前、次のようなことを書いた。

結局、用語の定義も推論に使っている論理もよく分からないので、言ってることも意味不明ということだった。

事情があって、次のスライドを見ていたが、

社会科学系で、哲学よりマシだが、やっぱり用語の定義も命題の記述も曖昧。だが、これはこれで半形式証明スクリプトの例題にいいと思う。

とりあえず、上記スライドで使っている記述形式を順不同で列挙する。

  1. Suppose that 命題
  2. 命題 if 命題 (後置if文)
  3. But 命題 (butは接続詞なんだが、ニュアンスだけかも)
  4. Instead 命題 (butに近い)
  5. 命題 where 定義 (後置の定義、後追いの定義、letの逆順)
  6. 名前 is a/an x such that 命題 (定義)
  7. 名前 occurs when 命題 (よく分からない定義、後述)
  8. if 命題 then 命題 (条件付き命題)
  9. If a 名前 occurs (名前は述語で、その述語のインスタンスの存在を条件としている)
  10. there is no 名前 (名前は述語で、その述語のインスタンスの非存在の主張)
  11. 命題1 whenever 命題2 (if 命題2 then 命題1 と同義だろう)
  12. Suppose 命題. Then 命題 (supposeが仮定の導入)
  13. 命題1. Why? 命題2 (後付けの合理化、becauseを後に書くのと同じ、「なんとなれば」)
  14. We know that 命題 (確認かな)
  15. x would be a 名前 (名前は述語で、名前(x) にニュアンス入れたんだろう)
  16. now we have that 命題 (then 命題 と変わらないと思う)
  17. and we have (now we have と変わらないと思う)
  18. we have a 名詞 と we have that 命題 がある。名詞は述語である。
  19. we are done. (QEDと同じ)
  20. So suppose that 命題 (soは雰囲気接続詞だと思う)
  21. Clearly we need to have (clearlyは雰囲気副詞、we need to haveはサブターゲティング文)
  22. x must be 名詞/形容詞 (これもサブターゲティング文だろう)
  23. So now we have (so nowは雰囲気接続詞)

「よく分からない定義」の例

A Condorcet Cycle occurs when there is a violation of transitivity in the
social preference ordering.

次のようかな?

  • A Condorcet Cycle is a cycle c in R such that (∃c in R) ⇔ ¬(transitive(R))

しかし、cycleの意味が不明(未定義)なので、やはり分からない。cycleの意味の候補として:

  1. グラフ理論の意味でのサイクル:k頂点k有向辺からなる輪状グラフCnからGへの任意の有向グラフ射。
  2. グラフ理論的だが、狭義のサイクル:Cnからの写像(グラフ射)で、辺パートが単射なもの。
  3. ホモロジー的なサイクル:チェーン複体を作って、境界作用素の核の要素。

想像では、グラフ理論的な狭義のサイクルであって、さらにグラフ射として頂点パートが全単射であることを要求しているような気もする。それは他の記述からの僕の推測である。推測させる点でダメ。

上の定義を見ると、「コンドルセ・サイクルとは…である」という形ではなくて、「コンドルセ・サイクルが生じる〈occurs〉のは、… のときである」になっていて、コンドルセ・サイクルの発生原因、発生状況を記述してるだけで、コンドルセ・サイクルそのものが何であるかは定義してない。それを「定義」と呼んでいる -- ダメだなー。

例があるのはいいのだが、例のなかに、定義や証明の細部を推測する情報を入れている。例がないと、定義や証明を理解できないのは良くない。