このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

角〈かど〉の問題

ウォーカーのTQFT教科書(http://canyon23.net/math/tc.pdf)は、不完全で未完成で読みにくい。だが、面白いことも書いてある。

TQFTのQ(Quantum)がもう意味不明だから、TFTでもいいだろう。ウォーカーは、TFTを「Topological Fieldの理論」と解釈して、位相的場をまず定義する。これにはそれなりの手間がかかる。

アティヤの公理だと、TQFT=対称モノイド関手なんで、要求/要件定義にはなっても、構成の仕方がサッパリわからない。ウォーカーの場合は、アティヤ公理より前の、構成可能性の要件まで降りていて、TFT関手構成の素材である位相的場を定義している。

位相的場が関手で、この関手からTFT関手を作るわけだが、関手の定義域は共通している。nCobとは少し別な圏で、境界以外に角概念が入っている。角付き多様体(manifold with corners)、疑多様体(pseudomanifold)、割様体(stratifold)などの概念が必要。

球体(ニ面体)、単体、方体のいずれ(その他)を使うにしろ、セル複体の概念はどうしても必要になる。セルと複体構造をどう定義するかがキモになるだろう。

ウォーカーの定義は課題は示してるが解決は示してない感じだ。

  1. 余次元2までの角はあるが、一般的な角概念はない。
  2. 位相同型(または微分位相同型)を亜群にした同値関係は導入してるが、組み合わせ的議論は不十分。
  3. ウォーカーのMは圏ではないが、トレース付き対称モノイド多圏をベースにして、境界構造を入れるべきだろう。
  4. 境界構造には、圏のグレーディングが必要になる。これは圏に番号(グレード、次元)を付けて、番号を含めた構造を考えること。
  5. 境界構造と連携したバンプ関手も必要。バンプ関手は、柱体、錐体、懸垂のような、次元(グレード)を1個上げる操作。
  6. 空間のフィルトレーション、ストラティフィケーションは必要。
  7. 空間X上のすべてのストラティフィケーション(セル分割構造)の全体からなる集合K(X)が必要。
  8. 集合K(X)には細分順序で順序構造が入る。K(X)は圏とみなせる。
  9. インデックス付き圏 X |→ K(X) からグロタンディーク平坦化が難しい。
  10. 台空間に拘らないで、セルフ複体の圏ありき、から出発するのがいいのかも知れない。
  11. 位相空間の代わりに距離空間を台にして、距離複体を考えるのがいいかも知れない。セル内はユークリッド距離を使い、他のセルとは最短折れ線で距離を定義できる。距離ベースなら、連続写像とPL写像の近さも計量出来るだろう。