テンソル圏
EGNO本 - 檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編の記事で引用した69ページの論説 http://inmabb.criba.edu.ar/revuma/pdf/v51n1/v51n1a07.pdf
- Title: TENSOR CATEGORIES: A SELECTIVE GUIDED TOUR
- Author: MICHAEL MUGER
この論説だと、
‘monoidal categories’ or ‘tensor categories’. (We use these synonymously.)
つまり、テンソル圏=モノイド圏 となっている。EGNO本のテンソル圏はもっと特化した概念だと思う。EGNO本を参照している短い論文 http://arxiv.org/pdf/1406.4204v2.pdf のほうから引用する。
出てくる言葉は、
- K-線形圏(K-linear category)、Kはしばしば省略する。
- 半単純線形圏(semisimple linear category)
- 有限線形圏(finite linear category)
まず、K-線形圏の定義は:
- アーベル圏であって、VectK豊饒構造を持ち、その2つの構造が整合的である。
アーベル圏ではあるが、VectKという具体的な圏を使って計算できる。この段階ではテンソル積がないが、道具として使うVectKにはテンソル積があるし、豊饒圏の定義の段階でVectKのテンソル積を本質的に使っている。
K-線形関手は、
- アーベル圏のあいだの加法関手であって、VectK豊饒関手であるもの。
これで、K-LinCatという圏の圏を作れる。
圏の半単純性と有限性を定義するために:
- 圏の対象が単純対象だとは、非自明な部分対象を持たないこと。
- 圏の対象Xが長さ有限の対象だとは、X = X0←X1← ... という部分対象の真に単調な鎖が有限で終わること。
- 圏の対象Xに対して、射影的対象Pがあって、エピ射 p:P→X があるとき、これを射影的カバーと呼ぶ。
圏の特性:線形圏が半単純(semisimple)だとは、
- すべての対象が単純対象の直和として分裂(split)する。
- 対象が長さ有限なら、このときの直和は有限直和である。
単純性は対象の性質だが、半単純性は圏の性質。
次に線形圏が有限(finite)だとは
- すべてのホム空間が有限次元ベクトル空間
- すべての対象が有限の長さを持つ。
- すべての対象が射影的カバーを持つ。
- 単純対象を同型類は有限個しかない。
有限線形圏の定義は、多元環と加群の理論を背景にしたものらしい。次が主定理:
線形圏が線形モノイド圏だとは、
- モノイド積構造を持つ。
- モノイド積がホム空間の双線形写像となる。
VectKにより双線形写像が定義できるので、それを使ってK-線形モノイド積を定義している。K-線形モノイド積=K-テンソル積。
K-テンソル積を持つ圏がテンソル圏かというと、まだ条件があって、双対性を必要とする。任意の対象に左双対と右双対があって、それが一致するという条件(剛性条件)。
結局、K-テンソル圏Cの定義には色々と条件が付いて:
- Cはアーベル圏である。
- CはVectKで豊穣化されている。
- CはK-テンソル積(K-線形なモノイド積)を持つ。
- Cは剛性条件を満たす(左右対称な双対性を持つ)。
EGNO流では、既存のよく知られている具体的な圏VectK、FdVectKの性質を使って、テンソル積と双対を持つK-線形圏を調べる、というアプローチだ。
[追記]人名のMICHAELは、forvoに無闇とたくさんある。
英語だと「マイケル」(例:マイケル・ジョーダン)、ドイツ語だと「ミヒャエル」(例:ミヒャエル・エンデ)、フランス語だと「ミケール」(例:ミケール(ミカエルとも)・ジャレル)に聞こえる。
MICHAEL MUGERは、オランダのナイメーヘン(Nijmegen)の大学にいるらしい。デンマーク語だとmugerを「ムワ」と発音する。けど、正式にはMügerとダイアクリティカルマークが付いているから違うかも。わからん。[/追記]