ブルース・バートレットの圏論的TQFT
ブルース・バートレット(Bruce Bartlett)の論文。
修士論文:
- Title: Categorical Aspects of Topological Quantum Field Theories (Submitted on 5 Dec 2005)
- Author: Bruce H. Bartlett
- URL: http://arxiv.org/abs/math/0512103
- Pages: 111
博士論文:
- Title: On unitary 2-representations of finite groups and topological quantum field theory (Submitted on 26 Jan 2009)
- Authors: Bruce Bartlett
- URL: http://arxiv.org/abs/0901.3975
- Pages: 243 (PhD thesis)
2005年の論文もThesisと書いてあって「博士論文にしては学生のレポートみたいだ」と思ったが、こっちは修論だった。2009年の"On unitary ..."は、さすがにオリジナルな結果がたくさん入っている。
ルーリエは、突出した天才だということは僕にもわかるが、彼が書いているものは僕にはサッパリわからん。バートレットはルーリエほどに超絶「頭イイ」とは違うようだが秀才。わかりやすい文章を書く才能はたいしたものだ。クダンの学位論文も巧みな構成でつまみ読みもできるように工夫されている。
僕が読んだのは5章だけだが、ほぼself-contained*1。解説も丁寧だし、例も豊富。アイディアの源泉も書いてあるのが親切だ。双対性に関して、「双対の全体」を自覚的/意識的に把握して、双対性の全体の集合に群による対称性を入れている。この発想は目から鱗。スピン構造とのアナロジーで考えたらしいが、そもそもスピン構造との類似に気が付くのが素晴らしい。特定のdual morphismを選んで割り当てる行為(スターオペレータの定義)は、バンドルのセクション=自明化として位置づけている。ナールホド。F|→F*はセクションを固定することだったのか。
もろ手随伴は、アーロン・ラウダ(Aaron D. Lauda)の"Frobenius algebras and ambidextrous adjunctions"に出てくる概念で、Fの右随伴かつ左随伴であるようなGのこと。両側構造(even-handed structure)があれば、右随伴から左随伴(左随伴から右随伴)を作り出せるので、もろ手随伴(もろ手双対)が自動的に出現する。バートレットは記法の選択もうまくて、計算が簡単に思える。
*1:ジャーブ(gerbe, gerbes)やトルソー(torsor)はわからんけど。