一般化距離空間のもうひとつの例
一般化距離空間はけっこう面白いな。d(x, y) = 0 ⇔ x≦y または双対的に、d(x, y) = 0 ⇔ x≧y と定義すると順序構造ができる。普通の距離では、この順序は自明(離散順序)にしかならないが、一般化距離では自明でない例が作れる。また、順序構造に対して、距離の値が0か∞とした一般化距離が定義できるから、Ord→GMetという埋め込み関手も作れる。いずれにしても、Ordとの強い関係があるのがメリットだ。
Xがコンパクト距離空間(普通の距離!)のとき、2つの非空閉集合 A, B⊆X に対してハウスドルフ距離(Hausdorff metric, Hausdorff distance)D(A, B)が定義できて、非空閉集合全体の空間が再び普通の距離空間になる。∞を許せば、空集合を入れても別にかまわない([追記]ちょっと面倒になるかも[/追記])。
通常のハウスドルフ距離を定義するとき、非対称な(正確に言えば対称とは限らない)δ(A, B)を定義して、D(A, B) = max(δ(A, B), δ(B, A)) として対称化している。普通の距離Dを入れたCl(X)(Xの閉集合の全体)もかなり面白いが、非対称なδをそのまま使ってもこれまた面白い。特に、「Aが非空でδ(A, B) = 0 ⇔ A⊆B」が成立する。
内部を持つ閉集合に限って、A∩B が空でないときにAとBを辺で結び、辺の重さ(コスト)を非対称ハウスドルフ距離で与えたグラフが作れる。このグラフをチェック複体のように考えることができないだろうか? フィンスラー幾何学*1とか有向ホモトピー(グランディス)とかとの関係もなんかありそうな?
まーともかく、これは予想以上に楽しいオモチャだ。
[追記]まとめておくの忘れたわ、典型的な例は:
[/追記]
*1:発音は「フィンズラー」のほうが近いと聞いたことがある。