このブログは、旧・はてなダイアリー「檜山正幸のキマイラ飼育記 メモ編」(http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama-memo/)のデータを移行・保存したものであり、今後(2019年1月以降)更新の予定はありません。

今後の更新は、新しいブログ http://m-hiyama-memo.hatenablog.com/ で行います。

離散ファインマン和

僕は、マーク・ウィリアム・ホプキンスの観察と示唆に触発されて、形式言語理論と(物理の)場の理論の類似をマジメに定式化しようと思ってきたわけで、スカラーとしてはクリーネ代数(言語や関係のベキ等半環)が念頭にあった。が、トロピカル半環もクリーネ代数と同様に興味深い。

となると、ファインマン型(あるいはファインマン風)の総和公式をクリーネ/ファインマンの公式とか呼ぶのはどうか?とも思える。経路積分が有限和になってしまうケースを一般に、離散ファインマンとでも呼ぼうかと思う。

ある程度の一般的な定式化を以下に:

まずは記号の準備; 1 + 1/2 + 1/3 + ... + 1/100 のような和を Σ(n=1, n=100; 1/n)のように書く。添字を使わなくて済むので便利。Π(n=1, n=100; 1 + n/100) も和が積に変わるだけで同様。

グラフ(空間)Gの2頂点をP, Qとする。PからQに至る長さnの経路の全体をΩ=n(P, Q)と書くことにする。長さn以下の経路の全体はΩ≦n(P, Q)、任意の長さの経路全体ならΩ<∞(P, Q)とする。Ω=n(P, Q) を単に Ωn(P, Q)、Ω<∞(P, Q) は Ω(P, Q) と略記してもよい。

AをG上の力学系(の生成作用素)とする。Aは辺に対して、なにか乗法的な量(モノイドの元)を対応させているとする。α∈Ωn(P, Q)が通過する頂点を、P=α0, α1, ..., αn=Q とする。αが渡っていく辺は、α0,1, α1,2, ..., αn-1,n のように書こう。

α∈Ωn(P, Q)に対して、Π(α; A)とは、Π(i=0, i=n-1; A(αi,i+1))のことだとする。要するに、n本の辺に対する値を全部掛け算すること。掛け算が非可換だと順序に注意が必要。

Ω(P, Q)は、黒丸ところに =n、≦n、<∞ のどれかが入ることを意味する。

さて、離散ファインマン和だが、スカラーは掛け算だけでなく足し算もできると仮定して、α∈Ω(P, Q)に対するΠ(α; A) を、すべてのαに渡って足し上げた値、つまり:

  • Σ(α∈Ω(P, Q); Π(α; A))

のことである。

離散ファインマン公式(群)は、離散ファインマン和が、他のなにかの量と等しいことを主張する等式。例えば、

  • Σ(α∈Ωn(P, Q); Π(α; A)) = (An)[P, Q]

右辺は、行列としてのAのn乗の成分。