ファイバー圏の幾何学的な定義
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20100520/1274324275#c に書いた用語法で、ファイバー圏(fibred/fibered category)の定義を書き換えてみよう、っと。なるべく幾何学的なイメージを使うことにする。関手柱と擬射の概念を使う。後で絵を入れることにしよう(先に文章)。
関手柱と擬射
F:C→D が任意の関手として、関手柱 Cyl(F) を次のように作る。
- C, Dの台となる有向グラフを同じ記号C, Dで表す。
- 有向グラフ C + D を作る。
- F(a) = b であるとき、aからbに至る有向辺を1本付け加える。この辺は母線と呼ぶ。
- C + D にすべての母線を加えた有向グラフを Cyl(F) とする。
関手柱Cyl(F)から自由圏を作る。自由圏の射はグラフのパスだから、パスに同値関係を入れて、商を取ることにする。最終的には商が圏になるようにするが、圏構造をあまり気にしないで順次構成していく。
パスの始点と終点は次のどれか:
- CからC
- CからD
- DからD
母線がCからDへの方向にしか走ってないので、DからCへのパスはない。また、パスのなかに母線は高々1本しか現れないし、母線を含むパスは必ず「CからD」のパスになっている。逆に、CからDのパスは、1本の母線を含む。
- CからCへのパスは、Cの結合により簡約する。
- CからDへのパスの簡約は後述。
- DからDへのパスは、Dの結合により簡約する。
母線はギリシャ文字小文字で表す事にして、[f1, ..., fn, α, g1, ..., gk] の形のパスを、[f1;...;fn, α, g1;...;gk] と簡約する。この形のパスを擬射と呼ぶ。擬射は、[Cの射, 母線, Dの射] の三組で表現される。擬射を含めた「一般化射」は次の3種になる。
- Cの射
- CからDに至る擬射
- Dの射
擬射[f, α, g]で、fもgも恒等射であるとき、垂直擬射と呼ぶ。垂直擬射は、母線と同じであり、F(a) = b である (a, b) とも同じである。
ところで、母線て、ジェネラトリックス(generatrix)というらしい。
擬可換な矩形と擬射の同値
次の矩形を考える。
f
A → B
↓ ↓
X → Y
u
ここで、fはCの射、uはDの射で、縦の2本の矢は母線=垂直擬射である。この矩形で F(f) = u であるとき擬可換と呼ぶ。擬可換矩形があるとき、AからYへの擬射があると考える。この擬射は、2通りの分解(矩形の左回りと右回り)を持つことになる。
擬射[f, α, g]があるとき、擬可換矩形による同値関係を使うと、[β, g] または、[f, γ] の形にできる。以下では、[β, g]の形を正規形として採用する。βは母線でgはDの射である。
以上から次の3種の射を定義できた。
- Cの射 f
- CからDに至る擬射 [β, g]
- Dの射 g
擬可換矩形による同値関係を利用すると、これらの射のあいだに結合を定義できて、結合律を証明できる。この圏を関手柱圏と呼ぶ。
持ち上げと水平射
Fを C→D な関手として、F(A) = X のとき、AをX上の対象と呼ぶ。Dの射gに対して、Bがdom(g)上の対象であるとき、Bをgの斜め上の対象と呼ぶことにする。F(f) = g のとき、fはg上の射、またはfはgの持ち上げであるという。
Dの射gと、gの斜め上の対象Bを固定した上で、gの持ち上げ f:A→B を考える。Bを固定しているので、持ち上げの余域はBとなる。オーバー圏(スライス圏)と同じ要領で、持ち上げの全体 Lift(g, B) は圏となる。圏Lift(g, B)の終対象を、gのBにおける普遍持ち上げ、または標準持ち上げと呼ぶ。
終対象は、upto-isoで一意的なので、普遍持ち上げも(それがあれば)upto-isoで一意的に決まる。Cの射 f:A→B が、g = F(f) のBにおける普遍持ち上げになってるとき水平射と呼ぶ。水平射と水平射の結合が水平射になるとは限らないことは、HANDBOOK Vol2の最後にある反例からわかる。一般的には、水平射の全体はクラスとなるだけで、部分圏を構成しない。
プレファイブレーションとファイブレーション
関手F:C→Dが、次の性質を持つときプレファイブレーションと呼ぶ。
- Dの任意の射gとgの斜め上の対象Bに対して、水平射=普遍持ち上げ f:A→B が存在する。
さらに、次を満たすならファイブレーションと呼ぶ。
- Cの射f, f' が結合可能な水平射のとき、結合f;f'も水平射である。
この性質により、D内の図式や部分圏を考えたとき、それをCに標準的に持ち上げることができる。
続きはソノウチ。