ねじれ付き(枠付き)絡み目のねじれ付き不変量
やっぱり、カウフマンブラケットはねじれ付き無向絡み目に対して定義するのが自然だな。ねじれ(ひねり)はねじれ乗数(twist factor)に表現される。輪っこもねじれもスカラー乗法になるのは不思議な気もするが、スプライシング(交差の解消)とヤンキング(引き伸ばし)は似ているから、まーいいのかも。ネジレ玉(後述)をハサミで切り落とすと、それは輪っこだから、輪っこが生じるスプライシングと同類、たぶん。
記号の約束:
- BD :ブレイド図の全体(平面の重力方向はあるが、図は無向)
- LD :無向絡み目図の全体
- RI :正則同位 ライデマイスター移動IIとIII
- AI :全同位 ライデマイスター移動IとIIとIII
- AR :アルチン関係式(等式) ライデマイスター移動IIとIIIに対応
- BW :ブレイド語の全体
- B :ブレイドの全体
- CC :cyclic cancellation ブレイド語の両端が互いに逆のとき消す
- CBD :closed braid diagrams
- M1, M2 :マルコフ移動
スラッシュは同値関係で商を作ることだとして、B = BD/RI は定義だと思ってよい。
- B = BD/RI = BW/AR
これがアルチンの定理。ブレイド語の説明を以下に;基本素片 /、\、|を任意に並べた列をブレイド記号またはブレイド字(braid letter)と呼ぶ。例えば、//|\| はブレイド記号。ブレイド記号xの幅W(x)を、W(/) = W(\) = 2, W(|) = 1 として、足し算で定義する。w(//|\|) = 2 + 2 + 1 + 2 + 1 = 8。
同じ幅のブレイド記号を何個か並べた列をブレイド語と呼ぶ。ブレイド語全体を、トゥラエフ流の基本変形とアルチン関係で商を取ると、ブレイド群BG(n)ができる(nは幅)。ブレイド群BG(n)の生成元は、幅nのブレイド記号の全体だが、n個の基本生成元上の自由群をアルチン関係で割っても同じ。一般のブレイド記号より、基本ブレイド記号だけを考えたほうが楽だが、絵図との対応は悪い。
BD/(RI + M1 + M2) がブレイド閉包演算子Clによる商 BD/Cl と同じことを主張するのがマルコフの定理。よって
- BD/(RI + M1 + M2) = BD/Cl = LD/AI
最後の部分、BD/Cl = CBL/AI = LD/AI はアレクサンダーの定理。
さて、絡み目に紐(むしろベルト、リボン)の回転量、またはネジレ玉(符号が付いている)の個数(符号付きで勘定)を付けたものをねじれ付き絡み目とする。ねじれ付き絡み目では、ねじれ付きヤンキング=ねじれ付きライデマイスター移動Iが使われる。ねじれ付き絡み目図の全体をFLD(framed link diagrams)とする。
カウフマンブラケットは、FLD上で定義できる。FLD/RI の不変量であり、ねじれ付きヤンキングに対してはスカラー乗法分だけ変化する。ネジレ玉がどの輪に分布しているかを無視して、ネジレ玉の総数だけを考えてもカウフマンブラケットに差はない。
そこで、BW/(AR + CC)×Z を考えて、この上でカウフマンブラケットを計算できる。(AR + CC)による同値関係では不変。マルコフ移動2に関しては、ヤンキングでの交差解消がネジレ玉の個数とのトレードオフになる。輪っこもネジレ玉も掛け算で作用する。この掛け算と、スケイン関係式を使って交差を解消して、ブラケットの値を計算できる。
BD/RI は、閉包演算Clにより FLD/RI に埋め込める。埋め込まれた像は、BW/(AR + CC)×Z で完全に表示できる。この表示による計算が、FLD/RI 上でのカフフマンブラケットの値を効果的に出す方法を与える。
あと、マルコフ・トレースとの関係とかが問題だな。