行列は行列、たかが行列、されど行列
僕は長いあいだ、行列は(基底を選んでの)線形写像の表現だと理解していた。これはよろしくない。線形写像の表現と思うのは行列の解釈の一例に過ぎず、それが行列の定義や本性というわけではない。
要するに行列は、数を正方形、長方形、三角形、立体などに並べたものなのだ。それ以上でも以下でもない。たまたま、線形写像と解釈するとうまくいくときもあるが、それが全てではない。行列をそのまま図形的対象として扱うこともできるし、意味を無視して計算アルゴリズムを考えることもできる。
カウフマンの抽象テンソルとか、圏論的な行列であるprofunctor(bimodule, distributor)とかの概念は線形写像からは出てこない。カテグラフ=箙の表現も図形としての行列の一般化になっている。
まず線形写像(機能)ありきではなくて、まず行列(図形)ありきなのだ。