無音記号と翻訳系の安定性/反射性
エルゴット・パスはフィードバック入力を扱うために有効な道具だと思う。が、無限パスになる可能性があるので、このままでは扱いが困難。エルゴット・パスが扱いやすくなる条件を考える。
まず、無音記号の入出力から考える。「入力/出力」という記法を用いる。a≠τとして、a/τ の形の遷移を受理遷移、τ/a の形の遷移を生成遷移、τ/τ は隠蔽(hidden)遷移と呼ぶ。ループの形をした隠蔽遷移は自明な隠蔽遷移、そうでなければ非自明な隠蔽遷移である。
隠蔽遷移が自明なものに限られる系は安定(stable)と呼ぶ。不安定な系では、異なる状態点への遷移が起きてもまったく観測できないことがある。安定な系では、無音記号の入出力があっても、受理または生成として観測にかかる。
すべての状態点に対して自明な隠蔽遷移がある系は反射的と呼ぶ。これは、単に遷移グラフがτ/τラベルで反射的になるということを述べている。
当面、安定かつ反射的な系だけを考えるべきだと思う。その理由は:
- (安定性から)観測不可能な遷移が生じないので、観測的振る舞いで系の構造の推測が容易。
- (反射性から)無音入力により(つまり何もしないのに勝手に)壊れる(未定義状態に陥る)ことがない。ほっておいても壊れない保証がある。
- 結局、観測可能なことが何もおきなければ、内部状態も停留/アイドリングしているだけで、内部的にも何も起きてない。
- 圏論と相性がいい。
安定かつ反射的な系は、(ある程度は)可視/観測可能で(ある程度は)リーズナブルだと言ってよい。